ベンジャミン・グロスさん/昌美(まさみ)さん出身地:アメリカ/愛媛県西予市民宿経営アメリカ出身のベンさんと西予市明浜町出身の昌美さんは京都で出会い、二人で宇和町に暮らすことに。古民家を自分たちで改装し民宿「おめぐり庵」を営む。ベンさんは古武術を習得しており、神伝武術道場で武術を教えたり氣功整体施術も行っている。長期で宿泊するお客さんは食事の準備や農作業、建築作業などを一緒に体験し「自然のサイクルの中で暮らす生き方」に触れることができる。宇和に佇む民宿「おめぐり庵」。この民宿はベンさんと昌美さんの手で丁寧につくられ営まれている。日々やることは季節や天気に合わせ、その日ごとで違う。二人の活動は多岐に渡るが、全て元々ある自然のものを使って作り循環していくのが基本だ。建築では桧(ヒノキ)を切り出し、茅を刈り茅葺(かやぶき)をし、土を練り発酵土にして土壁を作る。農作では土作りに落ち葉や米ぬか、籾殻で作った燻炭(くんたん)などを用いる。森づくりでは桧を切り出した後の森に、元々森にあった落葉樹や広葉樹を植樹する。多種類の木があり動物たちが食べる実がある本来の健康な森の復活を目指している。二人にとって「仕事」と「暮らし」は切り離されたものではない。「私たちの目指しているものが民宿に付加価値を付けたり、面白いと思って民宿に来てくれる。そういう風に繋がっているんです。」民宿の改装やかまど付きのキッチン棟、武術ができる道場など次々と建設を進めている二人。道場は茅葺の屋根にする計画。『こういう暮らしがしたい』という想いが導いた出会い西予市に暮らすことになったのは今の家との出会いがきっかけだという。昌美「『こういう暮らしがしたい』というイメージがあるんです。縁側や庭がある。尺八や三線といった楽器が弾ける。犬が飼える。太陽が入って、農作物を日干しして…。この家に入ってここだなって決めて。」最初は西予市の空き家情報を市のHPで見ていたという昌美さん。不動産屋が持つ他の物件にも広げて探していたところ「ジャングルみたいな、森の中に屋根だけ見えているような家」を発見。自然がいっぱいの環境が良かった二人は、思い描いていた暮らしにぴったりだと決断されたそう。次々と本格的な改装・建築を手がけているベンさんだが、大工仕事の技術はここに引っ越してから身につけたという。ベン「やればできるようになる。人に頼んですると、いつまでもできないけど、一つの棚を作って、それが繋がってもっと大きく、それが小屋になってそれが家になって…ていう感じ。」また、昔ながらの大工さんと一緒に作業し「手でやる技術」を勉強していった。「西予市は特に、昔ながらの職人さんたちの技術っていうのがまだまだ生きている所だから。今、聞いとかないと、もったいないですよ。」移住の際や日々の暮らし中で、助けてくれる人や頼りにしている人は「挙げていくとキリがないくらいいる」という。その中でも特に職人さんが多いそう。「私たちのやってることを『面白い』と思ってくれる。懐かしさもあるかも。昔すごく大事だった木や石。その人たちはその価値をまだまだ知っている。それを使いたいと言うと『ひと肌脱いでやるか』っていう人たちが多くて。」心の中に余裕を持っている地元の人たちが二人に寄り添う。自家栽培のお米や旬のお野菜をふんだんに使った菜食玄米(ビーガン)のお食事がいただける。暮らし全部がつながったここでの暮らしで叶ったことの一つは、自分たちが食べるものを自分たちで作れるようになったことだという。昌美 「全部が繋がりましたよね。食べ物を作り出す、食べる、それを売る、民宿のような形で人にシェアできる。全てが自分たちの中で繋がったんです。」ベン 「またお客様もそれを手伝うというね。最終的には私たちが座って、お客さんがやって、うちが食べるだけになるというのが夢。」二人が感じる移住や田舎暮らしのポイントは「やる気がなければ何も始まらない。やっぱり自分がやらないけん。やればなんぼでも広がるけど。他の人にやってもらうまで待つんだったら(求める場所は)田舎ではないよね。」昌美 「とにかく自分の“暮らし”のイメージを持つこと。それを少しでもクリアにしておくと、家探しも場所探しも選びやすいかなと思います。」 おめぐり庵HPhttp://omeguri.com/